フリーランスとして働く人は年々増加しており、2021年には1,500万人を超えたといわれています。
一方で、フリーランスの労働環境はまだまだ整備されておらず、長時間労働や報酬未払いなどの労働条件のトラブルも起きているようです。
被雇用者である会社員は、労働基準法によって劣悪な条件で働かされずに済むように守られています。
これに対し、フリーランスでは明確な法律上の決まりがないので、知識がないとクライアントの言いなりになって、不利な労働条件に追い込まれかねません。
この記事では、フリーランスが自分の働く環境を自分で整えることができるように、労働に関する法律について解説します。
フリーランスの立場は、会社員などの労働者とは違います。
この違いを理解することで、仕事を請け負う際に、間違った条件で契約を結んでしまわないようにしましょう。
そして万が一、不当な要求をされたり、契約を無視されるなどのトラブルに遭った場合も、すみやかに正しく対処できるように、本記事を参考にしてくださいね。
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フリーランスに労働基準法は適用されません
労働基準法と聞くと、働く者すべてに適用される法律と考える人が多いかもしれません。
しかし労働基準法は、労働者を保護することを目的とした法律です。
労働基準法第9条では、労働者を「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義しています。
つまり労働基準法で保護される対象は、会社などの事業体に雇用されている会社員などの労働者であって、会社と雇用関係にないフリーランスは、「労働者」に該当しないので、労働基準法は適用されない、ということになります。
一方、フリーランスは事業体から委託された業務を請け負うので、雇用関係にはありません。
フリーランスを労働者と区別するのは、このような点です。
- クライアントからの発注や業務委託、業務遂行に関して、裁量権や拒否権がある。
- 業務を遂行する際に、クライアントの監督や指揮を受けない。
- 勤務場所や勤務時間、服装についてクライアントからの拘束を受けない。
- クライアントから受注した業務を、フリーランスの判断で他の人へ依頼できる。
- 報酬は、作業時間に応じて決定されるのではなく、納品物やサービスの提供など成果物に対して支払われる。
フリーランスに起こりがちな仕事上のトラブル
フリーランスは、個人の裁量で働き方を決めることができます。
そのため、労働時間も自由裁量が災いして、長時間労働や休日返上など働き過ぎになりがちです。
また、クライアントとの報酬支払いに関するトラブルも頻発しています。
たとえば、報酬の不払いや遅滞、納品物のクオリティに文句をつけられて報酬の支払いを拒否されたり減額される、などの被害報告が上がっています。
フリーランスは収入が不安定になりがちなので、資金繰りに余裕がないと、つい無理を押してでも受注しようとして、クライアントの言いなりになってしまうケースが多いようです。
労働基準法で守られるのは会社員だけ
先ほどもお伝えしたように、労働基準法の保護対象は事業体で雇われている会社員などの労働者だけです。
労働者は、仕事も事業体の監督や指示に従って行うという、上下関係では弱者と見なされるため、法律でその身分と権利を保障しようという前提なのです。
具体的には、労働時間や休日、休憩時間、時間外労働に関してこのように定められています。
- 労働者の労働時間は1日8時間、1週間で40時間
- 休日は、少なくとも毎週1日か、4週間を通じて4日以上
- 休憩時間は、労働時間が6~8時間の場合は最低45分、8時間を超える場合は1時間
- 規定以上に働かせる場合には、36協定を締結し、労働基準監督署に届け出る。
また賃金に関しても、労働の対価として労働者が確実に受け取れるように、以下の点が労働基準法第24条で明確に定められています。
- 賃金は通貨で支払う
- 賃金の全額を支払う
- 労働者に直接支払う
- 毎月1回以上、支払日を決めて支払う
- 一定の期日を定めて支払う
これは「賃金支払いの5原則」と呼ばれていて、企業はこれを守らなくてはなりません。
フリーランスを守ってくれる法律
では、労働基準法の保護対象ではないフリーランスは、どうしたらよいでしょうか。
フリーランスには、労働基準法のような身分や権利を保障してくれる法律はありませんが、独占禁止法や、それを補完する下請法などで不当な労働条件を禁止しています。
独占禁止法は、クライアント側の優越的地位の濫用を禁止しています。
取引の相手方が事業者であれば、フリーランスにも適用されるのです。
さらに下請法は、クライアントが資本金1,000万円超の法人の事業者であれば、フリーランスにも適用されます。
独占禁止法と下請法は、このようなクライアントの行為を問題行為として取り締まります。
- 報酬の支払遅延
- 報酬の減額
- 著しく低い報酬の一方的な決定
- やり直しの要請
- 一方的な発注取消し
- 役務の成果物に係る権利の一方的な取扱い
- 役務の成果物の受領拒否
- 役務の成果物の返品
- 不要な商品又は役務の購入・利用強制
- 不当な経済上の利益の提供要請
- 合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務・競業避止義務・専属義務の一方的な設定
- その他取引条件の一方的な設定・変更・実施
なお、名目上はフリーランスとして受注した仕事であっても、仕事の内容が監督や指示の下に行われるものであったり、一定時間数の拘束がある場合などは、「労働者」と見なされて、労働基準法や労働組合法などの労働関係法令が適用されることもあります。
参考
内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(概要判)」
公益財団法人公正取引協会「独禁法よもやま話(第14回)フリーランスと独占禁止法・下請法」
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フリーランスが仕事のトラブルを避けるために
それでは、フリーランスがクライアントとの仕事のトラブルを避けるにはどうしたら良いでしょうか。
転ばぬ先の杖として、契約書と、いざという時に相談できる窓口を確認しておきましょう。
契約書を交わす
まずはきちんとした内容の契約書を交わすことが大事です。
特に、労働者ではなく、フリーランスとして業務委託される契約になっているか、クライアントの優越的地位の濫用を認める要素はないか、報酬支払いに関して明確に規定しているか、という3点についてはしっかり確認してください。
契約書に入れるべき項目を具体的に挙げると、
- 報酬は納品物やサービスの成果物に対して支払われること
- 納品条件、期日
- 報酬の請求や支払いに関する取り決め(金額、方法、期限)
- 業務委託に際して、決定権が与えられていること
- 業務遂行に際して、自由裁量が任されていること
- 労働時間や労働場所、服装等について拘束を受けないこと
- トラブルが起きた場合の手続き、責任の所在、連絡先
- 契約期間
などがあります。
最近では、契約書のテンプレートもインターネットでダウンロードできるので、活用してみてください。
弁護士の無料相談サービスを利用するなどして、専門家に契約内容を見てもらうと安心です。
もしもの時の対処法を知っておく
もしもトラブルに遭った時のために、前もって情報を集めておきましょう。
フリーランスの働き方を検討している省庁は、以下の4つです。
- 内閣官房 成長戦略会議事務局(雇用・人材担当) 電話番号:03-5253-2111(代表)
- 公正取引委員会 事務総局 経済取引局 総務課 経済調査室 電話番号:03-3581-4919
- 中小企業庁 事業環境部 取引課 電話番号:03-3501-1669
- 厚生労働省 電話番号:03-5253-1111(代表)
雇用環境・均等局 在宅労働課
労働基準局 監督課
労働基準局 労働関係法課
これら省庁のホームページや、合同で策定している「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を、チェックしておくと良いでしょう。
また、第二弁護士会が運営している無料相談窓口があります。
契約やハラスメント、報酬の未払いなどの相談を、メール、電話、対面、ビデオ通話等により受け付けています。
匿名での相談も可能です。
フリーランス・トラブル110番(第二弁護士会が運営)電話番号:0120-532-110
それから、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」の策定を後押しした、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会でも、会員になると弁護士サポートを受けることができます。
会費は年間1万円です。
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会
報酬トラブル弁護士費用保険「フリーガル」(自動付帯)
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フリーランスの労働法について、今後期待できる動き
上でも述べた「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」は、最新版が令和3年3月26日に策定されていますが、今後もアップデートされる可能性があります。
こちらの3点が大きな課題です。
- フリーランス人口の増加への対応
- ギグ・エコノミー(インターネットを介した短期的労働市場)の発達への対応
- 人生100年時代の働き方改革や生産性の向上
また、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会も、フリーランスの実態をまとめたフリーランス白書を作成したり、政策提言をおこなっています。
ホームページにはフリーランスのための相談窓口もあり、キャリアアップセミナー、勉強会も開催しているので、コミュニティに参加することで、日頃感じている意見なども伝えることができますよ。
まとめ
この記事では、フリーランスの働き方に関するトラブル対策方法を学んでいただくために、会社員などの労働者と比べながら、労働条件や法的保護措置の違いについて説明しました。
この2つの違いを知ることにより、ご自分の契約内容がフリーランスとして適切な物なのかを判断する知識が得られたのではないかと思います。
政府により「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が策定されたものの、まだクライアントの不当な要求を押し付けられるケースがあります。
フリーランスが自分で状況を判断し、必要ならば泣き寝入りすることなく行動を起こせるようになることが最善です。
トラブル回避のためには、契約書の取り交わしが必要です。
契約書の内容を理解し、不備を指摘したり、自分の要望を盛り込む交渉ができるようになればベストでしょう。
そのためには、ご紹介した相談窓口で積極的に情報収集したり、実際に相談してみたりしてください。
フリーランスの労働環境を整えるための政策も、まだまだ発展途上。
フリーランスとしての私たち一人ひとりの意見や経験も情報発信したり共有して、社会全体で環境を整えていきたいところですね。
質問や感想があればご記入ください