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フリーランスが知るべき契約書の種類と書き方|義務化についても解説

フリーランスが知るべき契約書の種類と書き方|義務化についても解説

フリーランスとしてのお仕事の受注、おめでとうございます!

契約書は無事に取り交わされたでしょうか?「これから」という人も、「サインしちゃったけど、あれで良かったのかな?」という人も、今後のために要点をつかんでおきましょう。

この記事では、

  1. 契約書の必要性
  2. 契約書作成の3ステップ
  3. 契約の種類と契約書の形式
  4. 契約書で確認すべき14項目

について解説します。

契約書のチェックや、契約条件の交渉に役立つ知識がいっぱいです。

頭に入れて、契約にまつわる不安やトラブルをなくしましょう。

さらに、契約書のひな形や、相談窓口もご紹介します。

これでもう、契約書を読むのもめんどくさくないし、契約トラブルもこわくない!

ここで覚えた知識を生かして、信頼できるクライアントと良い契約を結んで、安心してお仕事してくださいね。

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目次

フリーランスの受注に契約書は必要?

フリーランスが仕事を受けるとき、依頼する側の委託者(以下、クライアントと呼びます)と契約書を取り交わします。

「難しそうだし、読むのがめんどうだなあ」なんて敬遠してはいけませんよ!

契約を交わすのは、おもに次の二つの意味があるんです。

契約書を交わす意味
  1. クライアントとあなたの間で、「何を、いつまでに、どのように完成させ、報酬はいくらにするか」といった業務の詳細を、誤解のないように、仕事を始める前に確認する
  2. 仕事を始めた後で、意見や記憶の食い違いからもめたり、想定外の問題が起こったりした場合でも、混乱を防いですみやかに解決する

フリーランスは、企業の従業員のように労働法で保護されていないので(*)、自分で知識を身につけて、働く条件を守らなくてはなりません。

契約を交わすときには、「委託された業務の内容」、「納期」、「報酬」、「クライアントと対等な立場であること」を明確にすることが大事です。

「契約内容をきちんと理解するなんて,私には無理!」「心配だから、法律の専門家に相談したい。」という人もいるかもしれませんね。

でも、専門家の相談費用はそう安くはありません。

フリーランスの人は、ある程度は自力で契約書を確認できるようになっておいたほうがいいでしょう。

といっても、要点とパターンを押さえれば大丈夫です。

基礎的な知識があるだけでも、自分に不利な条件に気づくこともできますし、ポイントを絞って専門家のアドバイスを引き出せるので、相談費用も節約できます。

*ただし、業務の実態などから判断して「労働者」と認められる場合は、労働関係法令が適用されます。

参考:厚生労働省「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」

契約書を作成するメリット

契約書を作成するメリットは、以下の4つです。

1)契約内容が法律で保護されるので、不当な要求や、契約違反を防げる。

フリーランスで困るのは、報酬が支払われない事態です。報酬の不払い・未払いは、絶対に避けたい。クライアントから、威圧的な態度で無理な要求をされるのもいやですね。

2)後で「言った」、「言わない」のトラブルを避けられる。

個人で受注するフリーランスのほうが、発注側のクライアントよりも立場が弱くなりがちです。押し切られてしまわないよう、契約書を交わすことで、トラブルを未然に回避しましょう。

3)トラブルが起こったときも、どのように対応するかの方針を決めていれば、話をつけやすい。

トラブルは、お互いに協力して解決しましょう。そのためには、契約の趣旨を理解し、常にゴールに向けて方向性を決めることです。また、契約書作成と調整の段階から、発注側の要望を受けるばかりでなく、積極的に質問や提案をすることで、発注側と「対等に意見を出し合える関係」を、最初から準備しておきましょう。

4)お互いに信頼関係を築ける。

上に示した3つの点をはっきりと意識して契約に向かうことで、誠実で対等な雰囲気が、自然とできてきます。
そうすれば、前向きに働きやすくなりますよ。

契約書に書かれていない事態が起きたら?

予期せぬトラブルで、契約書で決めたとおりにいかないこともあります。

取引において、クライアントとフリーランスの間で明確に取り決めていなかった点があれば、法律(主に民法)が適用されます。

ですから、契約で決めていなかったからといって、クライアントの主張が一方的に通ってしまうということはないのです。

契約書を結ぶことができなかったり、細かい点まで決めていなかったりした場合でも、法律によってあなた自身が守られる可能性もあります。

ですから、困ったことがあれば、法律の専門家にすぐに相談しましょう。

例えば、厚生労働省のフリーランストラブル110番では、無料で弁護士に相談することができます。

さらに同サービスでは無料で和解あっせんも提供していて、クライアントとの関係を調整したり、問題の解決案を提示して、サポートしてくれたりします。

フリーランストラブル110番はこちら

フリーランスの契約書作成3ステップ

それでは、契約書の作成から契約締結までのプロセスを、順番に説明します。

ステップ1:叩き台の作成

契約書作成の第一歩は、叩き台作りです。

一般的には、クライアントが叩き台となる契約書を用意することが多いです。

しかし、何らかの事情で、クライアントが契約書を用意してくれない場合もあります。

そんなときには、受注するあなたが叩き台を用意しなければなりません。

難しそう…と尻込みする人もいそうですが、実は契約書を最初に作ったほうが自分に有利な条件を盛り込めるので、得なのですよ。

チャンスだと思って、やってみましょう。

自分が取引で得たいもの、守りたい条件、譲れる部分などをリストに書き出してみます。

そして「ひな型」を利用して、あなた自身の望む形の叩き台を作ってみましょう。

最近では、テンプレートもたくさん用意されています。

検索してダウンロードできますよ。テンプレートについては後ほど詳しくご紹介します。

ステップ2:詳細の交渉

契約書の叩き台ができたら、クライアントとあなたの両方で、それぞれ確認して、詳細を詰めていきます。

まずは、叩き台を受け取った側が、項目を一つずつ精査します。

「修正したい」「削除したい」「この項目と入れ替えたい」「条件を追加したい」などと、相手にはっきり伝えて大丈夫です。

要望は、できるだけ具体的な表現で返しましょう。

要望を返された側も、あらためて契約書を見直し、よく検討した上で、修正案を提示します。

このような感じで、双方でやり取りしながら交渉を繰り返して、契約書を整えていきます。

簡単に合意できる部分もあれば、どうしても受け入れられない提案もあるでしょう。

はじめは「受け入れたくない項目」であったとしても、交換条件という形でなら譲歩できる部分もあるかもしれません。

お互いに譲り合ったり、条件を軽くするなどして、歩み寄っていきます。

すべての項目で合意に至れば、契約書を締結する段階に進みます。

でも、最後まで折り合えない項目がひとつでも残れば、契約合意はできません。

契約合意にこぎつくことにこだわりすぎず、条件が折り合わずに契約が成立しない場合もあることは、理解しておきましょう。

そういう場合は、仕方ないです。契約をあきらめましょう。

もしも、合意までの交渉過程で、相手方の押し付けが多かったり強かったりするように感じるなら、立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。実際に仕事を始めても、たびたび一方的な要求を繰り返される可能性がありますよ。

ステップ3:契約の締結

契約書の項目全てに合意できたら、契約書を二部印刷して、製本テープで製本します。

それぞれに捺印・署名をして、お互いに一部ずつ保管します。

なお、必ずしも捺印が必要なわけではありません。

ただ、法律上でも慣習上でも、「捺印=合意の意思表示」と認識されるのが常識です。

このため、重要な契約については、相互に捺印するように求められる場合が多いです。

一方で、現代では契約手続きもデジタル化が進み、電子的に作成された契約書に、電子署名を入れて、電子ファイルとして保管する、というやり方の「電子契約」も普及してきました。

DocuSignなどの電子署名サービスを使う場面も、今後さらに増えるでしょう。

使い方は簡単で、電子署名サービスが用意した書体の中から好きなものを選びます。

契約者の氏名をタイプ入力すると、それが手書き風のフォントで表示されて、ファイルの署名欄に自動挿入されます。これでサイン完了です。

DocuSignはこちら

フリーランスの契約の種類

フリーランスは、会社などの団体組織に属していません。

独立した個人事業主(自営業者)として、仕事に応じて契約を結び、技術や才能を使って依頼された物を提供することで、報酬を得ます。

フリーランスが、雇用関係のない法人から仕事を請け負うことを「業務委託」と呼び、そのときに結ぶ契約が「業務委託契約」となります。

業務委託は、業務内容や法律上の責任の違いによって、請負型と委任型(と準委任型)に分けられます。

また、発注のたびに契約書を交わす単発契約型と、ベースとなる契約条件をまとめたおおもとの契約書にプラスして、発注のたびに簡易的な個別契約を結ぶ、基本契約+個別契約型に分類できます。

それでは、請負型と委任型・準委任型、単発契約型と基本契約+個別契約型の、それぞれの違いについて詳しくみていきましょう。

フリーランスの仕事で多いのは業務委託

業務委託では、企業などの法人が、社外の個人事業主や法人に業務を任せます。

業務を代行してもらったり、成果物を納品してもらい、報酬を支払います。

雇用者に対して労働時間に見合った報酬を払うのと違い、完成品もしくは完了した業務に対して、報酬を支払うのです。

フリーランスとして働く場合、法人から業務を請け負うことが多いでしょう。

ただし、実質的には雇用関係であるのに、業務委託契約を結んで外注と見せかけ、法的義務や金銭的な負担を免れようとする「偽装請負」をする企業もあるので注意してくださいね。

フリーランスが業務委託を請け負う場合は、あくまで「個人事業主」として独立して業務執行するのであり、クライアントとの間に上下関係はありません。

ですから、クライアントから指図されたり、命令されるような関係ではないのです。

契約書にも、その点が明記されているか、しっかりと確認してください。

委託業務の内容別の2つの形「請負契約」と「委任・準委任契約」

業務委託は、法的には「請負契約」と「委任・準委任契約」に分かれます。

どちらの場合でも、「個人事業主」として仕事の依頼を受けることが条件です。

「請負契約」とは、クライアントに対して仕事の完成を約束するもの。

たとえば、ホームページ制作や、ソフトウェア開発、建設工事などです。

請負契約では、仕事を仕上げるという「結果」に対して、受注側(請負人)は責任を負います。

結果を出せなかったら、請負人は補修するか、損害賠償するかしなくてはなりません(民法645条「瑕疵担保責任」)。

逆に言えば、結果さえ出せば途中の過程は問われませんので、下請けや外注に出してもいいのです。

一方、「委任契約」とは、税理士や弁護士などの法律に関わる業務を対象に、納品物や完成品のない業務を定められた時間や期間において遂行する場合に結ぶ契約を指します。

契約内容に応じた時間数や進行度合いに対して報酬が支払われるので、「結果」は問われません。

ただし、依頼された業務をプロフェッショナルとして、一定のクオリティを保って任務を遂行する義務(民法第644条「善良な管理者の注意義務」)を負います。

委任契約は、委任する側(クライアント)が受任する側(フリーランス)を信用して業務を委託する契約なので、フリーランスがクライアントの許可を得ずに、業務を下請けや外注に回すことはできません。

また、民法上は委任契約と同じルールが適用される契約として、「準委任契約」というものがあります(民法656条)。

委任契約との違いは、委任契約は法律に関連した行為が委託する対象になっているのに対し、準委任契約は事務処理などの実務的な行為を委託します。

会社の受付や事務作業をはじめ、多くのフリーランスの仕事がこれに当たります。

以上、請負契約、委任契約・準委任契約について、法律上の責任の違いを説明しましたが、実際の仕事では明確な線引きはありません。

たとえば、デザイナーは完成されたデザインを納品する請負型の契約を取ることもありますし、会社のデザイン業務を統括する準委任型の契約だって取ります。

契約内容別の2つの形「単発契約型」と「基本契約+個別契約型」

業務委託契約書の形式は、大きく2つに分かれます。

一つは、業務委託のたびに結ぶ契約(ここでは便宜上、「単発契約」と呼びます)。

もう一つは、同じ業務を何度も繰り返し委託する場合に便利な契約で、ここでは「基本契約+個別契約型」と呼びます。

これは、取引の条件として使い回しのできるベース部分をまとめた主契約を作っておき、都度つどの業務発注においては、シンプルな発注確認のやり取りで済ませる、という方法です。

「単発契約型」では、業務委託に関する条件をすべて盛り込みます。

「基本契約+個別契約型」では、基本契約で個別契約の発注条件(納品物、期間、報酬)を除いた、取引の基本条件をまとめます。

基本契約のなかには、どのような形の連絡によって、個別契約を取り交わしたことにするかについての決まりも入れておきます。

フリーランスの契約書に入れるべき14項目

それでは、契約書で取り決めておくべき項目をみていきましょう。

全部で14点の説明がありますが、契約内容によっては、必要のない場合もあります。

契約書を確認するときには、自分に必要な項目と、そのチェックポイントを参考にしてください。

1.業務内容、目的、成果物または遂行方法、納期

委託される業務内容は、何を(成果物)、いつまでに(納期)、どのような状態にして、業務完了とするか、を明確にしましょう。

また、業務の完成形または必要水準として求められていること(目的)、目的遂行のためにどのような作業を手段や対象とするか(遂行方法)も決めておくと、イレギュラーな事態が発生した場合も、その流れに沿って方針を立てたり、交渉しやすくなります。

2.報酬、支払方法、支払期日

報酬額は総額だけでなく、「納品物1件ごと」や「打ち合わせ1回ごと」の明細も契約書に記載します。

そして、見積書を作るときに契約書と紐づけましょう。

また、業務中に発生する費用についても、事前に決めておくことを忘れずに。

支払方法は、たいていは銀行振込です。

支払期日は、業務の締め日から支払日までの期間があまり長くならないように設定しましょう。

3.契約期間

業務委託が長期にわたる場合は、契約期間を設定します。

また、更新する可能性があるなら、どのような手続きで更新するかを取り決めておきます。

一般的には「クライアントと、受託者・受任者であるフリーランスの両方から特に申し出がなければ、自動的に延長する」とすることが多いです。

解約についても「1か月前の予告で解約できる」などと書いておきましょう。

4.知的財産の帰属、利用形態

納品する完成品の著作権がどこに帰属するかを決めておきます。

通常は、クライアント側に著作権を移すことが多いです。

利用形態として、いろいろな形で使いまわしていく場合は、考えつく限りの合意内容を盛り込みます。

納品した完成品を別の媒体に置き換えたり、保存したり、複製、転載、翻訳する場合など、形や場面ごとに、何をどこまで認めるかを取り決めておきます。

5.秘密保持

委託された業務に関する情報を、外部に漏らしてはいけません。

違反すると、クライアントの事業計画を無駄にしてしまうこともあります。

このため、秘密保持契約を結んで、情報漏洩を防ぎます。

業務委託契約書とは別に、「秘密保持契約書」を作成する場合もあります。

6.禁止事項(再委託、権利義務の譲渡、競合他社の業務請負等)

禁止事項としては、以下を禁止する場合が多いので、事前に確認しましょう。

再委託

受注側のフリーランスが、業務を外注したり、他へ委託することを認めないのが一般的です。

クライアントがフリーランスと委任契約を結ぶ場合、その能力や信用性を考慮して決定しています。

このため、第三者に再委託してしまうと、クライアントが期待する契約内容やクオリティの保証がなくなります。

認めるとしても、再委託する必要性や、再委託先の信用性などを検討する必要が出ます。

また、受注側の業務の丸投げによる責任放棄や、外注でマージンを取って利益を得る行為を防ぐ意味合いもあります。

権利義務の譲渡

再委託とほとんど同じですが、契約上の立場や、契約から生じる権利、または義務を第三者に譲渡したり、引き受けさせたり、担保にしてはいけないとする項目です。

再委託と同じ考え方で、契約は相手を選んで交わすものなのに、無断で変更してしまうと、新しい契約相手が適切な相手であるかがわかりません。

結果として、不都合が生じる可能性があります。

競合他社の業務受注

競合他社の業務委託を、同時並行して受けるのを禁止する場合も多いです。

クライアントと競合するような事業を立ち上げたり、同業他社と取引したりすることを制限します。

7.損害賠償

業務を遂行するうえでは損害を出さないことがベストですが、万が一に備えて損害が出てしまった場合について、賠償の請求方法や金額を取り決めておきます。

損害賠償条項とは、クライアントまたは受注側が契約書の内容に違反して、相手に損害を与えた時を想定して設けます。

法律的には、損害賠償の額の予定を決めておく、という解釈です(民法420条1項)。

フリーランス側が受ける可能性のある損害は、報酬の未払いや支払遅滞です。

一方で、クライアントが受ける損害は、受託者/受任者が求められた業務を遂行しなかった(債務不履行)ために受ける、利益や信用の損失です。

波及効果という観点からは、クライアントが受ける損害のほうが規模は大きい場合が多いでしょう。

このような場合には、あらかじめ契約書で損害賠償額の上限を決めていたとしても、適用されなくなることもあります。

債務不履行にならないように、くれぐれもご注意を。なお、契約書に損害賠償条項の記載がない時は、民法を元に損害賠償請求することもできます。

8.不可抗力

不可抗力の事態とは、天災、疫病、感染症、戦争、内乱などの、いわゆる「自分ではどうしようもない事情」です。

いずれかの不可抗力の事態によって、業務を遂行できなくなることもあり得ます。

あとでクライアントから責任追及されないように、免責条件として、考え得る不可抗力事象を具体的に列挙しておきます。

ただし、実際に免責が認められるためには、不可抗力と業務の関連性を証明することが求められる場合もあります。

9.契約解除の条件と、契約の中途終了の場合の報酬

基本的には、クライアントとフリーランスのどちらからも、契約を解除できないものと考えましょう。

しかし、途中の段階で契約者のどちらかのせいで相手方が明らかに不利益を被っていて、契約を続けることが合理的ではない場合には契約を解除できるようにしておくべきです。

契約の解除条件として、契約違反になる条件を決めておきます。

解除の流れとしては、相手方に契約違反があったら警告を行い、猶予期間中に改善しなければ契約を解除する、というのが一般的です。

ただし、猶予を与える余裕がないほどの重大な違反に関しては、直ちに契約解除できるとしたほうが良いでしょう。

また、契約解除する場合には、途中まで遂行した業務に対する報酬をどう精算するかも決めておきます。

一口に契約解除といっても、実際にはさまざまな状態や状況が考えられますので、あらゆる場面を想定して、個別に報酬の精算額なども決めていく必要があります。法律の専門家に相談するのがおすすめですよ!

10.反社会的勢力の排除

ビジネスにおいては、法令遵守(コンプライアンス)が求められます。

いかなる事情があっても、反社会的勢力と関係を持つことは避けましょう。

また、反社会的勢力の仕事を引き受けないようにしましょう。

信用を失ってしまうことにつながります。

契約書では、契約当事者が反社会的勢力ではなく、今後も反社会的勢力にはならないことを表明します。

ところで、相手方が「反社会的勢力」である、と定義・認定することが簡単でない場合は、どうしたらいいでしょうか。

そんな場合に備えて、契約書に

暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求行為、脅迫的な言動、暴力および風説の流布・偽計・威力を用いた信用毀損・業務妨害その他これらに準ずる行為に及んだ時は、相手方が反社会的勢力に該当すると認められた場合と同様に契約を解除できる

と明記しておきましょう。

これは、フリーランスの立場の弱さにつけこんで、不当要求や、威圧的な言動をする取引先を避けるのにも役立ちます。

必要に応じて契約解除し、損害賠償請求を行なってくださいね。

11.業務期間終了後の存続項目

契約期間(業務委託期間)が終わった後も、秘密保持や損害賠償、管轄裁判所に関する条件は、効力を存続させるほうが良いです。

契約期間後に不備が発覚した場合に備えて、その効力を存続させることを明記します。

12.管轄裁判所

万が一、契約トラブルが発生した場合、まずは話し合いで解決するように努めます。

でも、話し合いでは決着せず、訴訟になることもあります。

そのような場合はどの裁判所で第一審を行なうのか、を取り決めておくのです。

法律では、「訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する」(民事訴訟法第4条第1項)とあり、訴えられる側の所在地を管轄する裁判所に決めるのが一般的です。

13.協議事項

業務を進める中で、意見の違いなどが発生したりします。

そのような場合でも、「当事者間での誠実な協議によってトラブルを解決する」ことを義務として合意しておけば、クライアントからの一方的な主張の押しつけを阻止できます。

「いいからやれ」、「話し合いには応じない」などと、一方的な主張の押しつけがあれば、契約違反となります。

弱い立場に回りがちなフリーランスにとっては、重要な項目です。

14.契約締結の日付と責任者

最終的に契約を締結した日付を記入し、契約当事者双方の名前と所在地を記して、捺印します。

フリーランスは、実名をフルネームで記入しましょう。

屋号を届け出ていても、契約の当事者はあくまでも「あなたという個人」になります。

屋号を入れたければ、受託者の名称を、「〇〇(屋号)こと〇〇(自身の実名)」として記入します。

これで契約完了です。

契約書は、クライアントとフリーランスがそれぞれ1部ずつ保管します。

「単発契約型」と「基本契約+個別契約型」の契約書の違い

それでは、契約書の構成をみていきましょう。

回限りの契約である「単発契約型」と、個別契約に関して共通して使いまわせる契約事項を、基本契約書で一括して取り決めておく場合の「基本契約+個別契約型」の構成に分けて説明していきますね。

「単発契約型」の構成

「単発契約型」の構成は次のようになります。

「単発契約型」の契約書
  • タイトル:「業務委託書」
  • 前文:契約書冒頭で、契約当事者を明記し、どのような契約を取り交わすのかを宣言します。どちらが委託者(クライアント)で、どちらが受託者かを明確にします。
  • 契約項目(1から14までの項目)
  • 日付、契約当事者の氏名と所在地

「基本契約+個別契約型」の構成

基本契約書
  • タイトル:「業務委託書」
  • 前文:契約書冒頭で、契約当事者を明記し、どのような契約を取り交わすのかを宣言します。どちらが委託者(クライアント)で、どちらが受託者かを明確にします。
  • 基本契約書の適用範囲:何の業務に対する基本契約書なのかを明らかにします。
  • 個別契約の成立:何をもって、個別契約の成立とするかを定めます。
  • 本業務の内容等(1から14の項目)
  • 日付、契約当事者の氏名と所在地

個別契約の中で、基本契約書とは違う内容に変更する必要がある場合は、「個別契約において明記すればそちらが優先されるように」ここで定めておきます。

「別途定める様式での個別契約書の取り交わしにより」と規定したり、「委託者がメールで第〇条記載の項目を受託者に連絡し、受託者がこれを承諾する内容のメールを返信することにより」などと規定したりするのでも良いです。

個別契約書

委託者、受託者、日付のほか、業務内容、期間、報酬などを明記します。

フリーランスが契約書を作るときに参考になるサイト

最後に、実際に契約書を作るのに役立つサイトをまとめます。

ひな形をダウンロードできるサイトと、契約相談を行える相談窓口をご紹介しますので、活用してくださいね。

契約書雛形

ウェブさえ

WEB系フリーランス用の業務委託契約書をダウンロードできます。解説付きなのも、便利です。

Wor-Q 働くみんなの連合サポート

日本労働弁護団監修「フリーランスのための自由に使える契約書雛型」です。この記事で説明した、請負型、委任型、単発契約型、基本契約+個別契約型のテンプレートを入手できます。説明も詳細で、勉強に役立ちますよ。

相談窓口

厚生労働省のフリーランストラブル110番

文中でも紹介しましたが、無料で弁護士相談や和解あっせんのサービスを受けられます。電話やウェブミーティング、メールでの相談にも対応しています。

よろず支援拠点

「独立行政法人中小企業基盤整備機構」が設置している機関です。国の機関の窓口ということで、安心ですね。
おもに社会保険の関係やパソコンのセキュリティ管理、税務申告の相談が行えます。都道府県ごとに支援拠点があり、分野の相談に対応しています。相談は無料で、何度でも可能です。

法テラス

同じく、国が設立した、法的なトラブルを解決するために設けられた総合相談所です。法テラスでは、法制度に関する情報と、相談機関・団体等(弁護士会、司法書士会、地方公共団体の相談窓口等)に関する情報を無料で提供しています。

また、経済的に余裕がない人が、法的なトラブルにあった時には、無料で法律相談をおこない、必要に応じて弁護士費用も立て替えてくれます。

フリーランスからよく挙がる契約書に関するQ&A

ここまでフリーランスが契約書を作るときに知っておくべきことをお伝えしてきました。

お伝えしたことを参考に契約書を書いてもらえればと思うのですが、実際に契約書を作るときにはいくつか細かい質問があります。

そこで、ここからはフリーランスからよく挙がる質問とそれに対する回答をご紹介していきます。

契約書に収入印紙は必要?

経済的な取引をするときに必要な「収入印紙」は、請負契約をする場合のみ必要になります。

郵便局にいって収入印紙をもらってから契約書を作りましょう。

ただし、収入印紙は扱う金額によって値段が変わってくるので注意が必要です。収入印紙の金額は次のようになります。

契約金額収入印紙額
1万円未満非課税
10万円以下200円
10万円超え50万円以下400円
50万円を超え100万円以下1000円
100万円を超え500万円以下2000円
1千万円を超え5千万円以下1万円
参考:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」

契約書に使用する印鑑は何が良い?

契約書の場合、印鑑は「割印」と「契印」を使うのがおすすめです。

割印…契約書が複数枚になったときにつながりを表す印鑑

契印…契約書が複数ページになったときにつながりを表す印鑑

これらの印鑑を使うことによって、契約書が改ざんされるのを防ぐことができます。

捺印は必須ではありませんが、自分の身を守るためにやっておくことをおすすめします。

契約書の甲乙はどちらが自分?

決まりはありません。どちらでも大丈夫です。

一般的には「甲」がクライアントで「乙」が自分にする人が多いので、少しでもリスクを減らしたいという方はそうするのをおすすめします。

ただし、甲乙は必ず使わなければいけないものでもありません。間違えそうな場合は利用を控えましょう。

契約書が義務化!?今、話題のフリーランス保護新法とは

最後に、今話題になっているフリーランス保護新法について解説していきます。

フリーランス保護新法を簡単にいうと「契約書を作るのが義務になる法律」です。

契約書はトラブルを避けるのに大切なのものですが、実際のところ作っていないケースも多くありました。

その結果起きたのが企業側による急な業務内容・報酬額の変更。

被害を受けるフリーランスも多くいたため、2022年の9月に政府が新法制定を目指し動きはじめました。(2023年2月8日時点ではまだ制定されていません。)

フリーランス保護新法が制定され、契約書が義務になると企業の負担は一気に増えます。

フリーランスが契約書を作ってクライアントに渡せるようになれば、企業から喜んでもらえますし、継続受注しやすくなりますよ。

まとめ

以上、フリーランスが使うことの多い業務委託契約の内容や、契約書の書き方について紹介しました。

なんとなく難しそうで、とっつきにくかった契約内容も、それぞれの意味やパターンを知ることで、理解が進んだのではないでしょうか。

まず、契約書を交わすことの意義をお伝えしました。

契約書は、フリーランスの立場と受注条件を守るために大切なものです。

きちんと確認して、要望があれば、ためらわずに交渉してもいいことを覚えておいてください。

契約書作成の流れも、頭に入りましたか?叩き台作成→確認と調整→合意→締結の順番で進めて、最後は署名と捺印を押して、1部ずつ保管するのでしたね。

業務委託契約には、請負契約と委任契約(または準委任契約)がありました。

請負契約は、完成品を納品することが目的であるため、途中の過程では下請けや外注に出しても良い契約です。

委任契約と準委任契約は、委託された業務の遂行が目的です。

このため、他の人や会社に下請けや外注に出すことは、基本的には禁止でした。

弁護士や税理士などの場合は委任契約、事務作業などの委託には準委任契約を結ぶのでしたね。

また、契約書に入れ込む項目で、確認しておいてもらいたいポイントも14個に分類してご紹介しました。

契約書に入れ込む項目
  • 業務内容、目的、成果物または遂行方法、納期
  • 報酬、支払方法、支払期日
  • 契約期間
  • 知的財産の帰属、利用形態
  • 秘密保持
  • 禁止事項(再委託、権利義務の譲渡、競合他社の業務請負等)
  • 再委託
  • 権利義務の譲渡
  • 競合他社の業務受注
  • 損害賠償
  • 不可抗力
  • 契約解除の条件と、契約の中途終了の場合の報酬
  • 反社会的勢力の排除
  • 業務期間終了後の存続項目
  • 管轄裁判所
  • 協議事項
  • 契約締結の日付と責任者

契約書の形式は、1回ごとにフルで契約を結ぶ単発契約型と、何度も同じような業務を受注する場合には、基本契約を結んでおいて、各回の業務発注には簡易な発注書で対応することもお伝えしました。

以上、契約書についていろいろと知っていただけたかと思います。

自分の身を守るには、知識をつけることが一番です。

紹介したひな形や無料の相談窓口なども利用して、自分に合った契約内容に近づけましょう。

契約書によって、あなたの労働環境を整えたり、トラブルを未然に防いだりできることをご理解いただけたでしょうか。

これからは契約書にきちんと目を通し、個人事業主として誇りと責任感を持って、お仕事をしていってくださいね。

この記事を読んだことで、契約書に目を通すことが怖くなくなったなら、嬉しいです。

知らぬは一生の損。

この記事で得た知識を活かして、今後より良い条件で、生き生きとお仕事を続けていかれることを願っています。

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バタバタと準備をして職場に行く毎日から抜け出したい

このような想いから、在宅で働きたいと思っている人は多いと思います。なかでもパソコン1つでしっかり稼げ、これから需要が伸び続けるWEBデザイナーに興味がある方は多く、もしかしたらあなたもそうかもしれません。

ただ、WEBデザイナーに興味があるとしても、全くの未経験の自分でもできるのかな、どうやって仕事を取っていけばいいのかなという不安がありますよね。

そんな方のために、今回は全くの未経験からWEBデザインを始め、その後WEBデザイナーとして活躍されている方の事例をまとめた電子Bookをご用意いたしました。

読んでいただくことで、在宅WEBデザイナーのなり方や仕事の取り方を知っていただけます。

無料ですので、お気軽に手にとっていただければと思います。

働きながらも家族と少しでも長くいたい
バタバタと準備をして職場に行く毎日から抜け出したい

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