WEBデザイナーとしてのキャリアに興味はあるけれど、専門学校やスクールは費用面でハードルが高い…。そうお考えの方にとって、「職業訓練」はWEBデザインを学ぶための選択肢となると思います。
しかし「実際のところ、どんなことを学べるの?」「本当にWEBデザイナーとして就職できるの?」といった疑問や不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では、40代から職業訓練に6ヶ月通い、WEBデザインを学んだ私の体験から、職業訓練について以下の内容をお伝えしていきます。
- 職業訓練に関する基礎知識
- 職業訓練でWEBデザインを学ぶメリット・デメリット
- WEBデザインが学べる職業訓練の学習内容と流れ
- 職業訓練校を卒業したあとの就職の実態
本記事を読んでいただくことで、職業訓練について詳しく知ることができます。実際に通うべきなのか判断するうえでの参考になると思うので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
※本記事では、筆者の体験を伝えている箇所がありますが、あくまで筆者の体験談であり、全ての職業訓練校に当てはまるわけではありません。
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WEBデザインが学べる職業訓練とは?

職業訓練とは、仕事を探している人を対象に就職に必要なスキルや知識習得を国が支援する制度のことを指します。
別名「ハロートレーニング」とも呼ばれ、ハローワークを管轄する厚生労働省が統括しています。本項目ではまず、職業訓練制度について理解を深めていきましょう。
求職者向けの職業訓練は主に2種類ある
求職者向けの職業訓練は主に2種類あります。どちらに該当するかで、対象者や利用できる制度が異なります。
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- 対象者:主に雇用保険(失業保険)を受給している求職者の方。
- 特徴:受講料は原則無料(テキスト代などは自己負担の場合あり)。雇用保険の受給資格がある方は、訓練期間中に失業手当の給付が延長されるなどのメリットがあります。比較的長期間(6ヶ月〜2年など)のコースが多い傾向にあります。
- 実施主体:国や都道府県、市町村など。
- 対象者:主に雇用保険を受給できない求職者の方(例: フリーター、主婦・主夫、雇用保険の受給が終了した方など)。
- 特徴:受講料は原則無料(テキスト代などは自己負担の場合あり)。一定の要件(収入、資産など)を満たせば、「職業訓練受講給付金」(月額10万円+通所手当など)を受け取りながら訓練を受講できます。比較的短期間(2ヶ月〜6ヶ月程度)のコースが多いです。
- 実施主体:厚生労働大臣が認定した民間の教育訓練機関など。
どちらの訓練に該当するか、また給付金の受給資格があるかなどは、個々の状況によって異なります。お住まいの地域を管轄するハローワーク(公共職業安定所)に相談して、ご自身がどの制度を利用できるか確認しましょう。
職業訓練に応募する流れ
職業訓練に応募する具体的な流れは、以下の図の通りです。

※地域によっては選考の前に説明会が設けられている場合もあります
公共職業訓練と求職者支援訓練のどちらに通うにしても、応募はハローワークからになります。ハローワークで、自分が受けられるコースについて、詳しく聞きましょう。
そして、職業訓練は誰でも受けられるものではなく、選考に合格する必要があることを理解しておきましょう。選考に合格してはじめて、受講の指示や具体的な説明を受けることができます。
WEBデザインが学べる職業訓練の倍率
職業訓練のWEBデザインコースは非常に人気であり、地域差や応募時期によって変動はするものの、倍率は2~4倍あると言われています。絶対ではありませんが、東京などの都市部は倍率が高い傾向にあり、職業訓練に入ることも難しくなりやすいです。
私自身、そういったことも考えて、引っ越しをして福岡の職業訓練に通っていました。もちろん、地方でも定員割れをすることは少ないので、しっかり選考に臨む必要があります。
訓練校によって試験内容は異なり、書類選考+面接、筆記試験+面接、面接のみ、筆記のみなどさまざまです。自分の通うところが、どのような選考をしているか、必ず確認してください。
▼試験内容の例

WEBデザインが学べる職業訓練の選考に受かるコツ
職業訓練のWEBデザインコースの選考に、合格するためのコツは以下の通りです。私は40代ですが、以下のことを実践し、職業訓練の選考を突破しました。実際にやっていたことです。ぜひ実践してみてください。
- 身なりを整えていく
- 社会人としての最低限のマナーは守る
- 職業訓練に通う明確な志望動機を伝える
- 就職の意思があることをしっかり伝える
- 授業には全日程出られるとはっきり伝える
- 想定される質問は調べて準備しておく
職業訓練は、就職の支援をするところです。面接担当は「職業訓練を卒業して本当に就職できるか」を見ています。そのため、社会人として身なりやマナーはもちろんのこと、就職の意思をしっかりと示すことで「この人なら就職できそう」と思えるようにしましょう。
また、授業に休むことなく出られると、言い切るようにしてください。曖昧な返事をしてしまうと、本当に面接担当を不安にさせるからです。
以下の動画で、職業訓練の面接における、NG例とOK例を実演していますので、ぜひ確認してみてくださいね。
※職業訓練に受かるうえで面接は大切な要素ですが、面接だけで合否が決まるわけではありません。経済的な状況なども、合否に影響を与えます。
WEBデザインを学ぶのに職業訓練に通う5つのメリット
つづいて、職業訓練でWEBデザインを学ぶメリットを5つ紹介します。
職業訓練は無料でWEBデザインを学べるだけでも十分なメリットですが、それ以外にも多くのメリットが存在します。
詳細を以下の項目で解説していきますね。
メリット1:教材費以外の受講費用をかけずに学べる
まず大前提として、受講費用がかからないことは職業訓練で学ぶ大きなメリットです。職業訓練は早期就職を支援するための国の施策であり、条件さえクリアすれば、無料でWEB制作についての勉強ができます。
▼職業訓練で学べるスキル例

目安として1万円程度の教材費はかかるものの、専門学校やWEBデザインスクールと比較すると大幅に費用を抑えることが可能です。また、職業訓練を受講することで、以下のような技能取得手当も出ます。
- 受講手当:受講した日に対して、日額500円が支給される(上限20,000円)
- 通所手当:職業訓練校までの交通費が支給される(月42,500円まで)
私自身、手当をもらいながら職業訓練に通っていました。無料で授業を受けられるうえに、手当がもらえるのは、とてもありがたいですね。
参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
メリット2:失業保険の制限が緩和される(公共職業訓練)
公共職業訓練のみになりますが、失業保険がすぐに受給できるのは職業訓練に通うメリットです。
退職理由が自己都合の場合、本来であれば失業保険をもらえるまで、2ヵ月かかります。ですが、職業訓練校に通うと2か月の給付制限期間がなくなり、すぐに失業保険が支給されます(支給金額は人によって異なります)。
また、失業保険の給付期間は通常90日(年齢・勤続年数・離職理由などによって変わります)ですが、職業訓練に通うことで、訓練延長給付を受けることもできます。
職業訓練に通うことで、失業保険の給付が早くなったり、もらえる期間が伸びるのは大きなメリットですよね。
メリット3:条件を満たせば給付金がもらえる(求職者支援訓練)
求職者支援訓練(失業保険を受給できない場合に通う職業訓練)では、条件を満たせば月額10万円の「職業訓練受講給付金」を受けとれます。厚生労働省が定める、受給条件は以下のとおりです。
- 本人収入が月8万円以下
- 世帯全体の収入が月30万円以下
- 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
- 訓練実施日全てに出席する
- (やむを得ない理由により欠席し、証明できる場合(育児・介護を行う者や求職者支援訓練の基礎コースを受講する者については証明ができない場合を含める)であっても、8割以上出席する。)
- 世帯の中で同時にこの給付金を受給して訓練を受けている者がいない
- 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けていない
- 過去6年以内に、職業訓練受講給付金の支給を受けていない
受給にあたっては、これら全ての要件を満たしているか事前審査がおこなわれます。受給が認められたあとも、訓練開始から1ヵ月ごとに「支給単位期間」が設けられており、その都度ハローワークに出向いて要件の確認と給付の申請が必要です。
なお「職業訓練受講給付金」の審査に通らなかった、もしくはそもそも要件に合わず給付金の対象外であった場合でも、求職者支援訓練の受講は可能です。
メリット4:就職に関するさまざまな支援をしてもらえる
単にスキルを学ぶだけでなく、その後の就職活動まで手厚くサポートしてもらえるのも職業訓練に通うメリットです。各職業訓練校で受けられる支援は少しずつ違うかもしれませんが、一般的には、以下のような支援を受けられます。
- 応募書類の添削
- 面接対策
- 求人情報の提供
- 就職活動についての勉強会
- 企業説明会・合同面接会の開催
- キャリアコンサルティング・職業相談
私も求人情報の見方や、選考に対してアドバイスをもらうことができました。就職支援については手厚いので、就職を強く希望している人にとっては、とても有難い制度ですね。
メリット5:WEBデザインツールを学割で購入できる場合がある
Adobe Creative Cloud(Photoshop、Illustratorなど)といったWEBデザインに必要なツールを、学割で購入できる場合があるのも、職業訓練でWEBデザインを学ぶメリットです。
WEBデザインに必要なAdobe社のツールは個人で購入すると比較的高価ですが、職業訓練の受講生となることで、それらを少し安く使えます。
※ただし、学割が適応されるかは受講する職業訓練校の認定状況によります。全員が学割を受けれるわけではないので、必ず受講前に確認するようにしましょう。また、卒業後は学割を使えなくなることがほとんどです。その点は注意してください。
WEBデザインを学ぶのに職業訓練に通う4つのデメリット

職業訓練は費用を抑えてWEBデザインを学べる魅力的な制度ですが、いくつかのデメリットも存在します。事前に把握しておくことで、後悔のない選択に繋がるでしょう。
デメリット1:授業の質が講師やメンバーに左右される
職業訓練の授業内容は、担当する講師のスキルや経験、教え方によって大きく変わることがあります。
最新の業界トレンドに精通した実践的な指導をしてくださる講師の方もいますが、一方で、教科書の内容をただ伝えているだけの方もいます。
また、クラスメイトの学習意欲やスキルレベルも様々です。熱心な仲間と切磋琢磨できる環境であれば理想的ですが、中には目的意識が低い受講者がいる可能性もあり、グループワークなどに影響が出ることも考えられます。
このように、講師やメンバーという「運」の要素が学習効果に影響を与える点はデメリットと言えるでしょう。
デメリット2:週5日通わなければいけない
WEBデザイン関連の職業訓練コースは、平日の昼間に週5日、数ヶ月間にわたって通学する必要があります。これは、集中してスキルを習得できる反面、時間的な拘束が大きいというデメリットにもなります。
現在仕事をしている人が退職せずに通うことは難しく、アルバイトや家庭との両立も容易ではありません。
また、自分のペースでじっくり学びたい人や、特定の分野だけを集中的に学びたい人にとっては、画一的なスケジュールが窮屈に感じる可能性もあります。体力的な負担も考慮する必要があるでしょう。
デメリット3:通ってもWEBデザイナー就職できるとは限らない
職業訓練校では就職支援を受けることができますが、残念ながら卒業すれば必ずWEBデザイナーとして就職できるという保証はありません。
授業だけでは就職できるレベルまでスキルが到達するのが難しいのです。現に私のクラスでも、希望通りIT業界やWEB業界に入れた人は、だいたい2割くらいでした。
その他の方は、WEBデザイナーにならずに以前働いていた業種に戻ったり、職業訓練校に就職の報告をするためにアルバイトを始めたりしていました。
このように、訓練を受けたからWEBデザイナーになれるわけではありません。厳しい就職市場を勝ち抜くための主体的な行動が求められることを理解しておく必要があります。
デメリット4:実務レベルのデザインを学ぶことはできない
WEBデザインの「デザイン」の部分を特に学びたい人にとって、企業が求める「実務レベル」のデザインスキルまで到達できないのは、1つのデメリットといえます。
職業訓練では、デザインツールの操作方法やコーディングを学ぶことができます。無料でこれらのスキルを身につけられるのは魅力的です。
しかし、実際にデザインを作れるようになるわけではありません。職業訓練修了時点では、デザイン業務の「アシスタント」レベルのスキルに留まる可能性があり、即戦力としてのデザイナーを求める企業の採用基準には届きにくいのが実情です。
私もPhotoshopやIllustratorの操作方法を身につけましたが、実際にどうやって作品を作ればいいかはわからないままでした。より専門的なデザインスキルを身につけたい場合は、デザインに特化したスクールの利用や、質の高いポートフォリオ制作に注力した自己学習が別途必要になるでしょう。
私が通ったWEBデザインの職業訓練で学んだ内容と流れ

私が通ったWEBデザイン関連の職業訓練で、6ヶ月間にどのようなことを学んだか、その流れのかをご紹介します。
全ての職業訓練で同じではないですが、参考として読んでいただければと思います。
1ヶ月目:Illustrator
訓練の最初の1ヶ月目は、デザインの基本となるグラフィックソフト「Illustrator」の習得から始まりました。
Illustratorの基本的な操作方法、図形の描画、色の設定、文字の入力・編集といった基礎を学びます。
2ヶ月目:Photoshop
2ヶ月目には、もう一つの重要なグラフィックソフトである「Photoshop」の学習に移ります。Photoshopは、写真の加工・編集、WEBサイトのデザインカンプ(完成見本)作成、バナー広告の制作などに幅広く活用されるツールです。
Photoshopの基本的なインターフェースの理解から始まり、写真の色調補正、切り抜き、合成といったレタッチ技術を習得します。
3ヶ月目:動画編集(Premiere Pro)
3ヶ月目は、近年ますます需要が高まっている動画編集スキルを「Premiere Pro」などの専門ソフトを用いて学習します。
この期間では、Premiere Proの基本的な操作方法、動画素材の取り込み、カット編集、テロップや字幕の挿入、BGM・効果音の追加といった、動画編集の一連の流れを学びます。
4ヶ月目:コーディング (HTML/CSS/JavaScript)
4ヶ月目からは、WEBサイトを実際に形にするためのプログラミング言語である「コーディング」の学習が本格的に始まります。
WEBページの構造を定義する「HTML」、デザインやレイアウトを指定する「CSS」、そしてページに動きやインタラクティブな機能を追加する「JavaScript」の基礎を学びます。
この期間を通じて、デザインカンプを元に、実際にブラウザで表示・機能するWEBページを構築するための基礎技術を固めます。
5ヶ月目:コーディング・実際にあるカフェのHP制作
5ヶ月目は、これまでに学んだHTML、CSS、JavaScriptの知識を総動員し、より実践的なWEBサイト制作に取り組みます。
私が通った職業訓練では、実在する店舗やサービスをテーマに、企画から設計、デザイン、コーディングまでの一連の流れを経験しました。
実際のカフェの魅力を引き出し、集客につながるようなWEBサイトを目指して制作を進めることで、より実務に近いスキルが身につきました。
6ヶ月目:カフェのHP制作・ポートフォリオ作成
最終月である6ヶ月目は、5ヶ月目から引き続き取り組んでいるカフェのWEBサイト制作を完成させるとともに、就職活動に不可欠な「ポートフォリオ(作品集)」の作成に注力します。
ポートフォリオ作成では、これまでの訓練期間中に制作した課題や作品(IllustratorやPhotoshopで作成したグラフィック、動画、そしてカフェのウェブサイトなど)を整理し、見やすく魅力的にまとめる方法を学びます。
職業訓練で学べないデザインはWEBデザインスクールで学ぶのがおすすめ

職業訓練では、WEBデザインの基本的な知識やツールの操作方法、コーディングの基礎を学ぶことができます。
これはWEB業界への第一歩として有効ですが、「デザイン」の領域において、より専門的なスキルを習得するには限界があります。
もしあなたが、WEBサイトの見た目の美しさや使いやすさを追求する「デザイナー」としての専門性を高めたい、と考えているのであれば、職業訓練だけではなく、WEBデザインスクールの活用を強くおすすめします。
私自身、職業訓練で身につけられるデザインスキルに限界を感じていました。そのため、職業訓練とWEBデザインスクールの両方に通い、コーディングとデザインのスキルをそれぞれを習得しました。
プロレベルのデザインスキルを身につけて、WEBデザイナーとして就職したいのであれば、WEBデザインスクールに入ることをおすすめします。
1つの選択肢として、私が卒業した日本デザインスクールもおすすめです。無料セミナーもあるので、ぜひ覗いてみてくださいね。
まとめ
本記事では、職業訓練を活用してWEBデザインを学ぶメリット・デメリットを中心に、訓練校選びのポイントや面接対策についても解説をしてきました。
職業訓練でWEBデザインが人気科目であることからも分かるように、WEBデザイナーに憧れている人はたくさんいます。
ただ、WEBデザイナーになってどんな仕事をしたいのかが具体的になっていないと、ペースの早い授業にモチベーションが追い付かないどころか、職業訓練での学びそのものが中途半端に終わってしまいます。
また職業訓練には費用がかからないというメリットがありますが、そこに捉われすぎると室の低い学習期間になってしまう可能性もあるため、職業訓練校のメリット・デメリットはしっかり把握した上で、自分に合ったカリキュラムが設定されている学校を選ぶようにしましょう。
あなたが自分に合った職業訓練校を見つけることができ、努力が実ってWEBデザイナーになれることを祈っています。