ここ数年、副業の解禁やオンラインツールの普及によって、新たな働き方を見出したいという方が増えてきました。
その中で注目されている職業の1つがWEBデザイナーです。
パソコン1つあれば場所を問わず仕事ができることや、業界自体が伸びていること、さらにはそのスタイリッシュなイメージからWEBデザイナーに興味がある方は多いと思います。
とはいえ、全くの未経験からの場合、そもそもWEBデザイナーとはどんな仕事で、どんなスキルが必要か右も左もわからないという方も少ないのではないでしょうか。
本書はそんな方のために、WEBデザイナーの仕事についてわかりやすくまとめたものになります。
当メディアを運営している日本デザインスクールは、これまで2万人以上の方に無料のセミナーでWEBデザイナーの働き方についてお伝えしてきました。その中で気づいたのは、WEBデザイナーの仕事について誤解している人が多くいるということです。
なかには、誤解をしたまま独学やスクールに通い「大切な時間やお金を無駄にしてしまった」とおっしゃる方もいました。
本書はそのような方を増やさないためのものでもあります。ぜひ、最後まで目を通していただき、WEBデザイナーの仕事について理解していただければと思います。
WEBデザイナーの仕事内容
では早速、WEBデザイナーの仕事内容からお伝えしていきます。
WEBデザイナーの仕事内容を理解する上では、WEBデザイナーが作るものと、WEBデザイナーがしている仕事の流れを両方知っておく必要があります。
ここでは「WEBデザイナーが作るもの」と「WEBデザイナーの仕事の流れ」を表を使いながら解説していきます。
WEBデザイナーが作るもの
まずお伝えするのがWEBデザイナーが作るものです。
一般的にWEBデザイナーは、WEBサイトを作る仕事だと思われています。たしかにWEBサイトを作ることも多いので、その認識は間違いではありません。
ですが、実際のところWEBデザイナーが作るものはWEBサイト以外にも多くあります。ここではWEBデザイナーの制作物として代表的なものを1つずつ紹介していきます。
WEBサイト
WEBデザイナーが作る最も代表的な制作物といえばWEBサイトだと思います。
制作会社に勤めているWEBデザイナーはもちろんのこと、フリーランスのWEBデザイナーも小規模なサイトを請け負うことがあります。
フリーランスとして案件を請け負う場合、単価の相場は次のようになります。
制作物 | 単価 |
WEBサイト一式 | 40万円~150万円 |
WEBサイトトップページ | 5万円~13万円 |
WEBサイト下層ページ | 2万円~5万円 |
ただ、WEBサイトと一口に言っても、
- コーポレートサイト
- サービスサイト
- ECサイト
- ブランディングサイト
- 採用・リクルートサイト
- メディアサイト
など、さまざまなものがあり、それぞれ単価や作るときのポイントが違います。
1つ1つの違いについて説明していくと非常に長くなりますし、どの分野に挑戦するかはスキルを身につけたあとで判断できるので、本書で詳しく説明することはしません。
ただ、WEBデザイナーになったあとでは大切な知識になるので、WEBサイトにいくつも種類があることは覚えておきましょう。
ちなみに、WEBサイトは稼ぎやすい仕事とはいえません。単価が高いものもありますが、その分設計から実装までに時間がかかるからです。
そのため、フリーランスの中にはWEBサイトは引き受けないという人も存在します。
バナー
WEBサイトやSNSなどに貼られており、クリックすると他のページに遷移する画像がバナーです。
バナーはWEBサイトなどに比べ、デザインをする部分が少なく、経験の浅い人でも挑戦しやすい制作物です。制作会社に入社した場合でも、バナー作成が最初の仕事になることは多くあります。
ただ、小さいからと侮ってはいけません。デザインする部分が少ないからこそ、実力が出やすいです。
単価も作品のクオリティによって大きく差が出ます。
制作物 | 単価 |
バナー作成 | 500円~2万円 |
フリーランスとして駆け出しの頃は1枚500〜1,000円と低単価ですが、デザインを極めていくと徐々に単価が上がっていき、最終的には1万2万円までいきます。
日本デザインスクールの卒業生の中には、1時間で2万円のバナーを作っている人がいて、その場合時給は2万円。
WEBサイトなどの大きなデザインを作れなかったとしても、デザインスキル次第で稼げるのです。
SNSのヘッダー
SNSのヘッダーもWEBデザイナーが作るものの1つです。
制作会社に勤めるWEBデザイナーが作ることはあまりなく、自社で商品・サービスを持っている事業会社のデザイナー、もしくはフリーランスWEBデザイナーがよく作っています。
制作物自体が小さいので単価が低いと思われがちですが、実はブランドへの影響が大きく、単価もバナーより高いです。
制作物 | 単価 |
SNSのヘッダー | 5,000円~2万円 |
一度作成したものが、ブランドイメージに合っていた場合は、WEBサイトやバナーなど他の案件も一気に受けられる可能性があります。
細かいところまで見られるので、案件としては少し難しいですが、丁寧にこなせばより大きなチャンスを得られるものだと思って、チャンスがあれば積極的に挑戦しましょう。
YouTubeのサムネイル
ここ数年でYouTubeが急激に伸びた影響で、需要が一気に高まったのがYouTubeのサムネイルです。
こちらもSNSのヘッダーと同じように、フリーランスWEBデザイナーやYouTubeをしている事業会社のインハウスデザイナー(事業会社内でデザインを担当する人)が作ることが多いです。
単価は既に用意されているテンプレートを利用するか、ゼロからオリジナルのものを作るかによって大きく変わってきます。
制作物 | 単価 |
YouTubeのサムネイル(テンプレあり) | 10セットで1000円 |
YouTubeのサムネイル(テンプレなし) | 1枚3000~5000円 |
テンプレートがある場合は、簡単な代わりに単価が低く、オリジナル作品の場合は難易度が一気に上がる代わりに単価も高いです。
クライアントの中には、オリジナルの作品に1枚1万5000円支払ってくださる方もいます。
テンプレートありは参入しやすいですが、稼ぎやすいわけではないので、WEBデザイナーとしてしっかり稼いでいきたい、実績を積んでいきたいという方はテンプレートなしに挑戦するのがおすすめです。
LP(ランディングページ)
あまり知られていませんが、実はWEB制作の中で1番稼ぎやすいのはLP(ランディングページ)です。
LPとは、1つの商品・サービスを買ってもらう(サービスがセミナーやイベントの場合は参加してもらう)ために作られた縦長のページのことで、24時間働く営業マンとも言われています。
売上に直結するものであるため、少しお金をかけてでも良いものを作りたいというクライアントは多く、他の制作物に比べて単価が高くなりやすいです。
制作物 | 単価 |
LP(ランディングページ) | 15万~100万円 |
案件の内容によって違いますが、一般的には1枚25〜35万で依頼されることが多く、デザインに加えてライティング部分も担当すると1枚80〜160万と単価が跳ね上がります。
最近ではノーコードツール(既にコーディングが施されており、デザインだけをすれば良いもの)を利用して比較的簡単にLPを作るのも流行っており、その場合は5〜10万円の間で取引がされます。
作るのに慣れてくれば、およそ1週間で25万円のLPが完成するので、フリーランスで月収100万稼ぎたい人はLPに挑戦するのがおすすめです。
WEBデザイナーの仕事の流れ
WEBデザイナーの仕事内容として、もう1つ知っておきたいのが仕事の流れです。
基本的にWEB制作は「要件定義(ヒアリングなど)」→「デザイン作業」→「コーディング作業」の3つの段階に分かれています。
ただ、コーディング(HTML/CSSを用いてWEBサイト等を実装する作業)が必要な制作物にかどうかによって内容が少し異なるため、2つのパターンに分けて紹介します。
コーディングが不要な制作物を作る場合
- 広告バナー
- SNSのヘッダー
- YouTubeのサムネイル
などのコーディングが必要のない制作物を作る流れは、次のようになります。
1.ヒアリング | クライアントが望むデザインの雰囲気やスタイルについて詳細を聞きます。 |
2.デザイン制作 | ヒアリングで収集した情報をもとにバナーのデザインを制作します。 |
3.デザイン確認 | バナーのデザインが完成したら確認し、クライアントからの承認を得ます。 |
4.修正 | クライアントがデザインに対して修正を要求した場合、必要な修正を実施します。 |
5.再度確認 | 修正後の最終確認。クライアントが納品物に満足していることを確認します。 |
6.納品 | 必要なファイル(通常はjpgやpng形式の画像ファイル)を納品します。 |
7.請求書発行 | プロジェクトの最終的な段階で、クライアントに対して請求書を発行します。 |
かつてはヒアリングから請求書発行まで全てWEBデザイナーがおこなうのが当たり前でした。
しかし、最近ではヒアリングや納品・請求書発行はWEBディレクターで、デザイン制作はWEBデザイナーと分業制で動いている制作会社も少なくありません。
フリーランスの中にも全てを一人でしている人と、チームを作り作業を分担している人がいます。
コーディングが必要な制作物を作る場合
WEBサイトやLP(ランディングページ)など動きがつく制作物にはコーディング作業が必要になってきます。
その場合、製作工数は少し増え、次のようになります。
1.ヒアリング | クライアントが望むデザインの雰囲気やスタイルについて詳細を聞きます。 |
2.ワイヤーフレーム作成 | WEBサイトやLPの基本的なレイアウトを簡単に表した設計図を作成します。 |
3.ワイヤーフレーム確認 | レイアウトと構造に関するフィードバックを受けます。承認を得て、次のステップに進みます。 |
4.デザイン制作 | ヒアリングで収集した情報をもとにバナーのデザインを制作します。 |
5.デザイン確認 | デザインが完成したら、クライアントに全体的な確認をしてもらいます。 |
6.コーディング制作 | 承認されたデザインを元に、HTML、CSS、JavaScriptを書いていきます。外注しても大丈夫です。 |
7.コーディング確認 | コーディングが完了したら動作と外観をテストし、問題がないかを確認します。 |
8.修正 | クライアントまたはテストフィードバックに基づいて、必要な修正を実施します。 |
9.納品 | クライアントに最終的に承認されたら、必要なファイルを納品します。 |
10.請求書発行 | プロジェクトの最終的な段階で、クライアントに対して請求書を発行します。 |
制作会社でコーディングが必要な制作物を作る場合は
- クライアントとの連携を取るWEBディレクター
- デザインを制作するWEBデザイナー
- デザインにコードを施すWEBコーダー
の3つの役割に分かれて、仕事を進めることが多いです。1人でコーディングまでできればなお良いですが、未経験からWEBデザイナーを目指すなら、まずはデザイン領域を極めるのがおすすめです。
フリーランスWEBデザイナーには、ディレクションとデザインを1人で担当し、コーディングは他の人に任せる人が多くいます。
ただ、あまりコミュニケーションが得意ではないといった理由で、WEBディレクターとチームを組んでいる人もいるので、その点は自分の性格や強みによって選択できます。
WEBデザイナーが実務で必要な知識・スキル
WEBデザイナーの仕事内容をお伝えしましたが、では実際にその仕事をするにはどのような知識・スキルが必要なのでしょうか。
正直なところ、持っていれば良いスキルをあげるキリがありません。しかし、それらを1つ1つ身につけていこうとすると、WEBデザイナーになるのに時間がかかりすぎてしまいます。
そのため、ここでは最低限この4つさえあれば、WEBデザイナーとして転職できる、独立できるというスキルを紹介していきます。
Photoshopの基本操作
WEBデザイナーとして実務をこなすには、WEBデザインツールのスキルは必須です。
ツールにはPhotoshop、Illustrator、figmaなどさまざまものがあるのですが、実務レベルで考えれば、Photoshopを使えれば十分です。
Photoshopの主な機能
画像の加工 | 画像の明るさや色味、コントラストなどを調整する |
画像の切り抜き | 画像の不要な部分を削除する |
画像の合成 | 複数の画像を組み合わせて1枚の画像にする |
テキストの追加 | 画像に文字を追加する |
装飾の追加 | 画像にフレームやステッカーなどの装飾を追加する |
当社で働いているプロのWEBデザイナーも使っているツールはPhotoshopだけですし、実際に日本デザインスクールではPhotoshopの使い方しか教えていませんが、それでも多くの卒業生が稼いでいます。
さらにいえば、Photoshopの操作に関しても、全ての機能を使えるようになる必要はありません。実務に必要な機能は本当に限られているからです。
未経験からであればまずは次の機能を覚えて、デザインをする練習に取り掛かりましょう。
- 文字ツール
- 移動ツール
- なげなわツール
- 自動選択ツール
- レイヤースタイル
- カラーバランス
残りの機能は制作の過程で必要になれば、その都度覚えていけば良いだけです。
デザインの知識と使いこなすスキル
WEBデザインにおいて、デザインのルールについての基礎知識は欠かせません。
デザインの基本的なルールを守っていかなければプロの仕上がりにはならず、いわゆる素人臭いデザインになってしまうからです。
WEBデザイナーになるうえで最低限覚えておきたいデザインの知識は次の3つ。
基礎知識 | 学習すべきこと |
レイアウト | ・WEBデザインの構成 ・基本的なレイアウト ・レイアウトデザイン |
配色 | ・配色パターン ・色の持つ性質や効果 ・配色のルール(色の組み合わせ、色の割合など) |
フォント | ・サイズや行間 ・フォントの種類 |
どれも非常に重要な知識なので必ず、覚えておくようにしましょう。
ただし、この3つの知識を知っていれば、必ずクオリティの高い作品ができるかというと、そうではありません。
大切なのはこれからの知識を応用して作品を作っていくスキルです。これができて初めてプロレベルのデザインができるようになります。
そのスキルを身につけるには練習はもちろん、コツを知ることが重要です。コツを知る手っ取り早い方法はプロからフィードバックを受けることなので、WEBデザインを勉強するときにはプロから習うのをおすすめします。
コーディングに関する基礎知識
コーディングに関する基礎知識も、WEBデザイナーとして大切なものです。
基礎知識があればコーディングを意識したデザインができるようになったり、コーディングを行う「コーダー」とコミュニケーションが取れるからです。
HTMLやCSSがどのような役割をしており、どこに使われているかくらいは覚えておきましょう。
ただし、WEBデザイナーの仕事はあくまで「デザイン」であり、コーディングのスキルはあくまで、+αのスキルです。
デザインのスキルが身についていないにも関わらず、コーディングスキルを一生懸命勉強した場合、デザイナーではなくコーダーとして仕事をすることになります。
デザインだけでも、WEBデザイナーにはなれるので、あなたが「デザイン」で食べていきたい場合は、まずデザインスキルを身につけるようにしましょう。
コミュニケーションスキル
WEBデザイナーはパソコンで作品を作るのがメインの仕事なので、コミュニケーションを取る必要がないと思われがちです。
しかし、実はWEBデザイナーとして働く上で、コミュニケーションは多くの人が思っている以上に重要です。特に重要なのは、制作物に関してクライアントと認識を揃える力。
この力がないと、作品を納品したときに「思っていたものと違う」と言われ、何度も修正することになったり、最悪の場合訴訟問題にまで発展します。
コミュニケーションというと、どこか生まれ持った才能のように思われがちです。しかし、ここでお伝えしているコミュニケーションスキルに関しては一切そのようなことはありません。
トラブルを生まないために必要なコミュニケーションは次の2つです。
- ヒアリングのときに1つ1つ丁寧に質問すること
- 制作物に関してこまめに確認を取ること
この2つをしっかりすれば、トラブルが生まれることはほとんどありません。WEBデザイナーとして働くときには、この2つを意識して活動するようにしましょう。
WEBデザイナーという職種の実態
WEBデザイナーがどのような業務をしているかをお伝えしてきました。業務ベースでは、WEBデザイナーがどのような仕事か理解していただけたのではないでしょうか。
しかし、仕事内容を知っているだけでは、WEBデザイナーを理解したというには不十分。本当にWEBデザイナーがどんな仕事かを理解するには「WEBデザイナーの楽しさや大変さ」を知ることも重要です。
ここからは、WEBデザイナーという働き方の実態を「楽しさ・やりがい」と「厳しさ・大変」に分けて解説していきます。
WEBデザイナーの厳しさ・大変さ
魅力からお伝えすることもできますが、上げてから下げるよりも下げてから上げる方が気持ちよく読めると思いますので、まずはWEBデザイナーの厳しさ・大変さからお伝えしていきます。
新人の頃は収入に見合わない労働時間になることもある
WEBデザイナーのようなクリエイティブ職には、どこかアイドルや芸人のような下積み時代があります。
新人の頃は先輩に教えてもらいながら仕事をするという理由で、収入が少なくなりがちなのです。
加えて、駆け出しの頃は制作スピードも遅いので残業をしなければいけないこともあり、労働時間と収入が見合わないと感じることもあります。
経験を積めば収入も制作スピードも上がるので、他の職業と同じくらいかそれ以上に稼げるようになるのですが、そのレベルになるまでは苦労することもあるでしょう。
納期への意識で心が疲れることがある
クリエイティブ職全般に言えることではありますが、仕事では「納期に遅れず納品すること」が大前提とされます。
そのため、WEBデザイナーになると、常に納期を意識して働くことになるのです。
大変なのは同じ期間に複数のクライアントを受け持った場合。
全ての案件を要領よくこなすために、スケジュール管理をする必要がありますし、間に合わなさそうな場合は徹夜をすることも少なくありません。
慣れてくれば、自分の制作スピードや他の案件を考慮した納期設定やスケジュール管理ができるようになりますが、駆け出しの頃は大変になることもあります。
ただし、納期への意識は会社の種類によっても違うので、その点は知っておきましょう。
制作会社でクライアントワークをする場合は納期は変えられませんが、事業会社(自社の商品・サービスを持つ会社)で他の社員にデザインを依頼される場合は比較的納期を調整しやすくなります。
デザインスキルがないデザイナーは必要とされない
少し前までは、ゼロからWEBサイトやバナーを作るのはノンデザイナーにはできませんでしたし、多くの人がデザインをするのは難しいと思っていました。
そのため、作品のクオリティが低くても、WEBデザイナーと名乗ることで仕事を取ること自体はそれほど難しくありませんでした。
しかし、ここ数年、技術が進化し、CanvaやWixなどノンデザイナーでも簡単にデザインができるツールが登場してきました。
それによりこれまで簡単なデザインでも、WEBデザイナーに仕事を依頼していた企業や個人事業主が自分でサイトやバナーを作るようになり、スキルのないデザイナーは必要なくなってきたのです。
今後もツールは進化すると考えられ、少し独学をしただけや、簡単なコードを覚えただけのWEBデザイナーがWEBデザイナーとして仕事をするのはますます難しくなるでしょう。
WEBデザイナーの楽しさ・魅力
WEBデザイナーの大変さや厳しさについてお伝えしてきましたが、もちろんWEBデザイナーには楽しさや魅力も多くあります。
ここからWEBデザイナーになる楽しさや魅力について詳しくお伝えしていきます。
将来性のあるスキルが身に付く
WEBデザイナーの魅力として、将来性のあるスキルが身に付くということがあります。
世の中にはさまざまなスキルがありますが、今だけしか使えないスキル(流行り廃りのあるSNSに関するスキルなど)や、斜陽産業でしか使えないものもあります。
一方、デザインは時代を問わず必要とされるものですし、WEB業界も成長を続けているので、WEBデザインスキルが使われなくなる可能性は極めて低いです。
確かにデザインを自動で生成するツールは出てきていますし、AIが発達するのに伴ってさらに高性能なツールが出てくるとは思います。
しかし、それらのツールで作れるデザインはあくまで機械的なもの。人の心を動かしたり、視線を誘導できるものではありません。
商品・サービスを売るためのデザイン、人をワクワクさせ企業のファンにさせるデザインを作るには人の心を理解して、レイアウトや配色を考える人の力が必要になります。
そのため、スキルのあるWEBデザイナーの仕事がなくなることはないですし、そういったスキルを身につけているというのは、将来に対する安心感に繋がります。
自分の体調や気分に合わせて働ける
好きな時間に働けるのは、WEBデザイナーの魅力です。
WEBデザイナーの大変なところとして、納期を意識しなければいけないことをお伝えしましたが、これは逆にいえば納期さえ守ればいつ仕事をしても問題ないということでもあります。
特にフリーランスの場合は就業規則もないので、働く時間に決まりは一切ありません。自分の体調や家族のスケジュールに合わせて柔軟に仕事ができます。
実際、当メディアを運営している日本デザインスクールを卒業し、フリーランスWEBデザイナーになった方のタイムスケジュールは人によってバラバラです。
育児や家事、さらには介護などをしながらスキマ時間で働いたり、休みたいときに休めるというのは非常に魅力的ですよね。
ちなみに、最近では会社員でも自由な時間に出社ができることが増えてきました。
現に、当メディアを運営している株式会社日本デザインで働くWEBデザイナーも、就業時間を「9〜18時」から「12〜21時」に変更していますし、制作会社で働くスクール卒業生も「家族の都合で仕事時間を変更することがある」とおっしゃっていました。
会社員をしながら自由な時間に働ける職種は滅多にないので、その点WEBデザイナーはとても良いですよね。
依頼されたから褒められる・感謝される
WEBデザイナーの楽しさややりがいとして外せないのが、仕事を依頼してくれたクライアントや会社の人から直接感謝されることです。
一生懸命作った作品を納品したときに「イメージ通りです!」「◯◯さんに頼んで良かったです!」と言ってもらえるときは本当に嬉しいものです。
ときには自分が制作したもののおかげで、クライアントや自社の売上が伸びるときもあります。
そのときにはクライアントに貢献できていることを実感できるので、なおさら喜びは大きくなります。
また、WEBデザイナーはどこか特別な仕事、センスが必要な仕事だと思っている人が多く(実際は違うのですが)、尊敬してくださる方も多いです。
仕事を褒めてもらったときには、自尊心が自然と上がります。
地道な努力が報われやすい
WEBデザイナーの良いところは、地味に努力した人が報われやすいところにあります。
「デザイン」と聞くと、生まれ持ったセンスが必要というイメージがあって、努力とは結びつかない人もいると思います。
しかし、デザインはアートと違い、生まれ持ったセンスは必要ありません。アーティストは生まれ持ったセンスや才能が必要ですが、デザイナーに求められるのはスキルです。
デザイン | アート |
・目的が課題解決 ・ルールやコツがある | ・目的が自己表現 ・ルールがなくセンスが必要 |
そのため、綺麗に見えるルールやデザインのコツを覚え、繰り返し練習していけば着実にデザインスキルが身についていきます。
また、華やかなイメージの強いWEBデザインですが、実際の業務では画像の位置を調整したり、色を少しずつ合わせたりと細かい作業が多いです。
ですが、そのような地道な作業の繰り返しが、クオリティの高い作品を作ることにつながります。
このようにWEBデザインは地味な努力を続けた人が、報われる非常にやりがいのある仕事なのです。
働く場所を自由に選びやすい
時間の自由さだけではなく、働く場所の自由さもWEBデザイナーの魅力です。
少し前までは打ち合わせの度にクライアントのもとにいかなければいけませんでしたが、オンラインツールが普及した今ではその必要は全くありません。
パソコンと通信環境があれば、世界中どこでも仕事ができます。フリーランスWEBデザイナーになれば、海外で旅をしながら仕事をするなんてことも夢ではありません。
実際、日本デザインスクールの卒業生の中にも、フィリピンやカナダで生活しながら、日本のクライアントから仕事をもらっている人もいます。
さらに、最近ではリモートワークができる会社が増えており、会社員でもある程度自由な場所で働けるようになってきました。
当社で働いているWEBデザイナーの中にも、東京から沖縄に移住をしてリモートで仕事をしている人がいます。
WEBデザイナーの働き方と収入事情
ここまでWEBデザイナーについてお伝えしてきましたが、その中で会社員とフリーランスという言葉が出てくることが何度かあったかと思います。
WEBデザイナーは会社員とフリーランスのどちらも目指せる職種で、スキルを身につければ、働き方を自由に選択できるようになります。
ですので、デザインスキルを身につける前から「絶対に転職」「絶対に独立」と決めつけるのは正直もったいないです。
ここでは今後あなたがスキルを身につけたあとに、どのような働き方をするか考える参考になるよう、WEBデザイナーの働き方を3つご紹介します。
会社員として働く
メリット | デメリット |
・安定した収入がある ・先輩社員に教えてもらえる ・デザインの経験を積みやすい | ・高収入を狙うのが難しい ・人間関係が自由ではない ・フリーランスと比べると制限が多い |
会社に雇用されて働く正社員のWEBデザイナーは、もっとも収入が安定している働き方です。
教えてもらうことが多い新人の頃はおよそ月収20〜25万円くらいが相場で、会社によっては20万を切る場合もあります。
ただ、2年、3年と続けて1人立ちできるくらいの経験やスキルが身についてくると、月30万円くらいもらえるようになります。
制作領域から卒業し、マネジメントやディレクションの立場に立つと、月収は40〜50万円になるでしょう。
ちなみに、会社員といっても制作会社(クライアントの商品・サービスをデザインする)と事業会社(自社の商品・サービスをデザインする)で、働き方や身に付く力は異なります。
メリット | デメリット | |
制作会社 | ・制作環境が整っている ・多種多様な案件を受けられる ・相談できるデザイナーが多い | ・社内でキャリアが狭い ・残業が多くなりやすい ・長期的な支援が難しい |
事業会社 | ・仕事を調整しやすい ・他のスキルも身に付く ・1つのサービスを育てられる | ・制作環境が悪い場合がある ・相談できるデザイナーが少ない ・サイトの立ち上げ経験が積めない |
表のように、どちらにもメリット・デメリットがあります。転職のときには、どちらが自分に合っているかを必ず考えるようにしましょう。
副業系フリーランスとして働く
メリット | デメリット |
・リスクなく追加報酬を得られる ・実績作りのための無料案件ができる | ・疲労が溜まりやすい ・税金の管理が面倒になる |
転職や独立か迷っている人、できるだけ低リスクでWEBデザインを始めたいという人におすすめなのが副業です。
独立や転職をする場合、今の仕事を一度辞めなければいけず、なかなか決断が難しいと思います。
一方、副業であれば、今の仕事を辞めないまま収入を増やせますし、制作実績ができるので、あとから独立や転職をしようと思ったときにもプラスに働きます。
実際、日本デザインスクールの卒業生でも、副業から始めて実績がついてきてから独立や転職の準備を始める人は多いです。
もちろん、なかには他の仕事をしながら副業としてずっと続けている人もおり、そういった方も毎月5〜10万円の副収入を継続的に得ています。
独立系フリーランスとして働く
メリット | デメリット |
・努力次第で高収入を得られる ・時間や場所に縛られずに働ける ・ストレスフリーなら人間関係ができる | ・収入が不安定になる ・税金、保険関係を全て自分でやる ・繋がりが希薄で孤独を感じやすい |
ここ数年、一気に増えたのが独立系フリーランスです。
誰にも縛られることなく、好きな時間に好きな場所で働くことが可能です。
また、自分が働いた分だけ収入が決まるのも大きな特徴。努力次第でガッツリ稼ぐことも十分できます。日本デザインスクールの卒業生にも独立してから1ヶ月で月収100万円稼いだ人がいます。
このように大きなリターンがある分、リスクも大きいです。
そのときの取引額や発注数で収入が大きく変わるので、とにかく収入は不安定です。先月と10〜20万ほど違うなんてこともあります。
また、税金や保険関係の資料も全て自分でしなければいけません。自由がある分、責任の範囲も大きい働き方だと思っておきましょう。
WEBデザイナーに向いている人
モノづくりが好き
WEBデザイナーに向いている人の特徴として、まず挙がるのはモノづくりが好きなことです。
WEBデザイナーはお客さんからの要望を叶えるために、WEB上にある広告バナーやホームページを作っていく仕事です。
そのため、「学生時代に図工が好きだった」「小さい頃からずっとハンドメイドが好き」という人にはとても向いています。
実際、フリーランスWEBデザイナーに「フリーランスWEBデザイナーになった経緯を教えてください。」と質問したところ、40.8%の方が「元々デザインやものづくりに興味があった」と回答しています。
根暗な性格をしている
意外かもしれませんが、「自分は根暗かも」と思っている人もWEBデザイナーに向いています。根暗な人は言い換えると内向的な人です。
内向的な人は1人で考えることが好きなので、黙々と作業を続けるWEBデザイナーがとてもあっています。
WEBデザイナーにはコミュニケーションが必要だから、根暗な人はWEBデザイナーに向いていないと思われがちですが、そんなことはありません。
根暗であることと、コミュニケーションが苦手なことはまた別の問題だからです。コミュニケーションはスキルであり、練習さえすれば上手くなります。
飽き性な性格をしている
飽き性な人もWEBデザイナーに向いています。
理由は次の2つです。
- 作るデザインが毎回違うから
- WEBデザインはトレンドの移り変わりが激しいから
WEBデザイナーは案件ごとに作る作品が変わります。お客さんによっても変わりますし、季節によっても変わります。
そのため、デザインをしていて飽きるということがありません。
また、WEBデザインはトレンドの変化が早いです。デザインの流行りが変化していくのはもちろん、新しいツールや機能もどんどん出ていきます。
人によっては、変化が早くて大変という人もいますが、飽き性な人にとっては楽しい仕事ですよ。
コツコツ作業をするのが好き
コツコツ作業をするのが好きな人もWEBデザイナーに向いていますよ。
WEBデザイナーは作品が華やかなことから、キラキラしたイメージを持たれがちですが、仕事内容は意外と地味です。
配色を決めたり、文字のサイズを1つ1つ工夫したりと、細かい作業をコツコツと積み重ねて1つの作品を作り上げていきます。
時間をかけた分、よい作品が完成したときにはものすごい達成感があります。そういった喜びのためにコツコツ作業ができる人はWEBデザイナーにとても向いています。
ネガティブ思考が強い
「意外でした!」という方も多いのですが、WEBデザインはネガティブな人に向いています。
ネガティブな人は作品を作るときに「本当にこれで大丈夫なのかな…」「もっとしっかりやらないとダメだ…」と思うので、作品の細部までこだわります。そのため、ポジティブな人よりもデザインのクオリティが高くなるのです。
実際、スクールでデザインを教えているときも「私、全然ダメなんです…」と言っている人のほうが作品のクオリティが高いということがたくさんあります。
これはポジティブな人がWEBデザイナーとして活躍できないということではありません。
確かにポジティブな人は勢いで作ってしまうので、作品の詰めが甘くなることは多いですが、それを自覚して細部までこだわればクオリティの高い作品を作れます。
ちなみに「デザインの仕事を取りにいくこと」に関してはポジティブな人のほうが得意なようです。
未経験の方からよくある質問
本書の作成している日本デザインスクールでは、これまで2万人以上の方に対してWEBデザイン業界の裏側やWEBデザイナーのなり方をお伝えするセミナーを開催して来ました。
さらに、セミナーに参加してくださった方には個別相談の時間もご用意して、具体的な疑問・相談にお答えしてきました。
ここでは、そのような取り組みをする中で、未経験の方からよくある質問をご紹介し、それに対してお答えしていきます。
あなたが思っているような疑問や不安もあると思うので、ぜひ参考にしてくださいね。
Q.この歳からWEBデザイナーになれますか?
A.WEBデザイナーは何歳からでもなれます。
WEBデザイナーは若くないとなれないと思われがちですが、そんなことはありません。なぜなら、WEBデザイナーで重視されるのは年齢ではなく、スキルだからです。
年齢が少し高くても、クオリティの高い作品を作れるのを証明できれば仕事を取ることは十分可能です。
そもそもクオリティの高い作品を作れるようになるか心配という方もいるかもしれませんが、その点も問題ありません。
クオリティの高い作品を作れるようになるのに、年齢はそれほど関係ありません。ルールとコツがあり、練習でそれらを身につければ若くなくてもクオリティの高い作品は作れるようになります。
実際に40代、50代の方でもクオリティの高い作品を作っている方はたくさんいらっしゃいます。
40代の方が作られた作品
50代の方が作られた作品
ただし、WEBデザイナーとして転職活動する場合は、年齢によって難易度が変わってきます。
20代 | レベルの高い作品があれば、転職は比較的簡単 |
30代 | レベルの高い作品と社会人経験をPRできれば転職は十分可能 |
40代 | 不可能ではないが転職できる可能性は低いと考えた方が良い |
50代 | ほとんど採用しているところはない |
表のように40代以上になると、マネジメント経験などがない限り転職は厳しいです。
そのため、40代以上の方はフリーランスや副業でWEBデザインをするのをおすすめします。
Q.WEBデザイナーになるのにセンスは必要ですか?
A.必要ありません。
WEBデザイナーはセンスが必要で、限られた才能のある人しかできない仕事だと思われることは非常に多いです。
しかし、実際のところそのようなことはありません。デザインにはルールとコツがあります。
ルール…配色の割合、配置の黄金比など綺麗に見えるための法則
コツ…オシャレで見やすいデザインを作るためのテクニック
このルールとコツを練習で身につけさえすれば、センスがなかったとしてもWEBデザイナーになることは可能です。
現に、プロのWEBデザイナーの中には、普段のファッションセンスや絵を描くセンスがない人もいます。
そのような人でも、クライアントから満足してもらえるようなクオリティの作品を作れているので、WEBデザインにセンスは関係ないとハッキリいえます。
ちなみに、ルールは本などを利用すれば覚えることができますが、コツは自力で身につけるのが非常に難しいです。
コツを着実に身につけたいという方は、プロのWEBデザイナーから作った作品を添削してもらうのをおすすめします。
Q.WEBデザイナーには資格が必要ですか?
A.必要ありません。
WEBデザイナーに求められるのは、クオリティの高い作品を作るためのスキルです。
そのため、ポートフォリオ(作品集)で、クオリティの高い作品を作れるのを証明できれば、資格は必要ないのです。
むしろ、資格を持っていたとしても、ポートフォリオに載っている作品のクオリティが低いと、採用されません。
当メディア株式会社日本デザインもWEBデザイナーを採用することはありますが、資格を持っているかはほとんど見ていません。
ポートフォリオの質が高ければ面接に進んでいただきますし、低ければその段階でお見送りしています。
もちろん、資格を取る過程でWEBデザインを勉強できることはあるので、資格の勉強が無駄になることはありません。
しかし、資格の勉強で得られるのは知識であり、それを作品に落とし込むスキルを得られるわけではないので、資格を取ったは良いけれど採用されないということは多々あります。
お金と時間をかけるにもかかわらず、採用してもらえるまでのレベルにならないことを考えると資格の取得は非常にコストパフォーマンスの低い勉強方法だといえます。
まとめ
今回はWEBデザイナーの仕事理解というテーマで、WEBデザイナーについて基本的なことをお伝えしてきました。
たくさんのことをお伝えしましたが、最終的にお伝えしたいのは「未経験からWEBデザイナーになるなら、まずはデザインスキルを身につけるのが最も大切」ということです。
本文でも、WEBデザイナーの仕事は「デザイン」です。ディレクションやコーディングは+αでしかありません。
デザインスキルがなければ、WEBデザイナーとして働くことはできませんし、今後出てくるAIなどによって仕事を奪われてしまいます。
逆にデザインスキルさえ身につけてしまえば、AIに仕事を取られる可能性は低いですし、会社員、副業系フリーランス、独立系フリーランスと働き方も自由に選べるようになります。
そのため、あなたがWEBデザイナーを目指すなら、まずデザインスキルを身につけることを最初の目標にしてください。